CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 270th 熱帯安楽椅子

それになにより私に具体的な快楽を与えるとても物覚えのよい器官を持っている。そして、品の良い言葉を。必要のない、だからこそ、美しい音楽のように私の耳を濡らす言葉を。彼はひかえめな冗談も好きだ。私をくすぐる甘い冗談。私の指が生み出す心の吐瀉物とはまったく無縁の舌をくるむオブラート。それは、ねじ式の缶切りや巻きのいらない時計のように日常を便利にさせる。
山田詠美「熱帯安楽椅子」    
『熱帯安楽椅子』より    

よくよく読むと、非常にエロティックな場面なのだが、山田詠美の小説は官能的でありながらも、官能小説で終わらせていないのは、やはりその表現方法が文学的だからなのではないかと思う。
様々なメタファーを組み合わせて紡がれる文章は本当に美しくて、何度読んでも新鮮だし、ドキドキする。
【DATA】    
山田詠美「熱帯安楽椅子」    
集英社文庫『熱帯安楽椅子』    
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