小説『指の戯れ』
私はリロイという名を口の中で転がしてみる。それは私にとって糖衣錠のような物で、口の中に長くとって置くには苦すぎる。しかし、二年という歳月が私に余裕を与えていた。「指の戯れ」『指の戯れ』より 山田詠美の初期の作品には黒人との恋愛を描いたものが…
彼は口数が少なく、言葉に詰まると素直な目で私を見詰めた。砂糖菓子を見るような目つきはとても正直で、じらす事で遊んでいる私たちのしきたりよりはるかに心に染み透った。「指の戯れ」『指の戯れ』より 「指の戯れ」は、山田詠美の初期の作品の特徴でもあ…
私は彼の体に快楽を与え始めた。私の唇は熱されたクレヨンのように溶けて、彼の体に容易に絵を描いた。黒いキャンバスは私をはじかない。私の髪の毛は彼と私の間で孤独に漂泊する。彼は、僕に与えてくれと私に懇願する。私は、そのせつない様子に感動して涙…