CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 271st 熱帯安楽椅子

 ワヤンが鍵を開けている間、私は屋根付きのポーチに置いてある籐椅子に腰をかける。そして、濡れたサンダルを足から外すために、テーブルに片足を載せる。サルンの前が割れ、私の脚の間からは暖まった匂いが流れ出して、ジンのそれに溶ける。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

バリ島は、季節的には、雨季と乾季に分けられる。『熱帯安楽椅子』の主人公である「私」がバリ島を訪れたのは雨季と乾季の間の時期なので、両方を楽しむことができる時期でもある。
だから、作品中には、雨のシーンがとても多い。
東京の雨とバリ島の雨は、やはりどこか何かが違う気がする。バリ島の雨は土の匂いが濃厚に漂い、うっそうと茂った緑から発せられるむっとした匂いが特徴的。
そんな雨の様子がこの文章からも伝わってくる。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Bonus Track Don't Rain on My Parade