CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

小説『晩年の子供』

Day 221st 花火

男と女って、まったく面倒だわ。体で魅かれ合って、それに飽きた瞬間に、離れられない関係になる。体が離れられないなんていうのは、まったくの嘘。離れられなくなるのは心が結びつき始めるからよ。体も心も結び付いて離れられないのは、だから一瞬なのね。…

Day 220th 花火

「涙が出る程、恋しいのは、発情期だからよ。お互いがお互いを欲しいと思うから、せつない気持になるのよ。それが男と女よ。まだ肉体的なつながりを持たない関係ならなおさらよ。信頼関係ってのは、寝てみて、初めて生まれるものなのよ」山田詠美「花火」『…

Day 217th 花火

私は、うんざりしました。すっかり夏休みのリズムが出来上がっているのです。それなのに、あんな埃っぽい街に行くなんて。私は、自分では、本当の贅沢を知っているつもりでいました。普通の若い人たちのように、夜遊びや流行の洋服などには何の興味も持って…

Day 101st    「堤防」    

私は、自力で何かをするという才能に恵まれていない。それが私の劣等感を形作っている。そして、私は、その劣等感の存在を認めつつ今日まで来てしまった。後一歩というところで、私は、いつも、すべてを諦める。私には、能力以上に発揮出来ることが、何ひと…

Day 94th「晩年の子供」

私は、物憂い気分に浸りながら、季節の移り変わりを感じていた。死を意識してから、私のまわりにうごめくはっきりと形を持たないもの、たとえば、季節、たとえば時間、そういったものが、急速に姿を現し始めていた。色を持ち、意志を持ち、私に向かって歩き…

Day 9th 「花火」

「涙が出るほど、恋しいのは、発情期だからよ。お互いがお互いを欲しいと思うから、せつない気持になるのよ。それが男と女よ。まだ肉体的なつがなりを持たない関係ならなおさらよ。信頼関係ってのは、寝てみて、初めて生まれるものなのよ」 山田詠美「花火」…