CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 265th 熱帯安楽椅子

漁師が砂を踏む音は鉄道員が雪を踏む音に似ている。音の主が見えない。けれど、証拠としての足跡はひとつひとつ残されて行く。何故、私はこんな時に冷たい雪を思い出すのか。情事の後の砂は、時折、雪に似てはかない。銀色。冷たい。熱い。そして溶ける。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

詠美の小説を読んでいると、次々と連想ゲームのように、様々な風景が浮かぶような場面に出くわすことがある。そこが山田詠美的な部分でもあるのだが、このシーンも、そんな連想ゲーム的な部分があり、楽しい。
砂と雪が似ているというのも、山田詠美にしか気づけないポイントだと思うし、それをこんな風に言語化できちゃうところが、やっぱりすごいとぼくは思うのだ。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Bonus Track Frozen ※ラメ入り