CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 269th 熱帯安楽椅子

私は自分の喉に届くものをすべて受け入れる。けれど、時には私の力の脱けた唇は彼の口づけをこぼしてしまうこともある。そんな時だけ、彼は少し意欲を持ち私の顎を片手でつかみ上を向かせる。決して押しつけがましくないやり方で。彼は私の心を、そして体すらも強姦しない。だから、私は彼といる。彼は波よりも静かだし、太陽よりも柔らかだ。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

ワヤンとの情事の場面は濃厚な空気感を持ったまま描かれ続ける。そして、ふたりのやり取りの間から生まれる、様々な描写は熱量を読者に伝えてくれて、ぼくの心ははその文章を読むだけで、どっぷりとこの熱帯安楽椅子に座ることになるのだ。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Track 02 Autumn in New York