CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 264th 熱帯安楽椅子

 木立の隙間で、月は切り抜かれた金色の紙。砂は逆らわないのにそこに映える草は私の背中を刺したがる。波は木々の向こうで生きている。私は横たわったまま放心している。やっと給仕された私の夕食。降り注ぐ星が層を成す彼の裸の背。私の髪は砂に流されて風紋を作る。終ったばかりの吐息の時間。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

『熱帯安楽椅子』を官能小説と呼ぶ人がいるが、果たしてそうであろうか?確かに、セックスを描いている箇所は多いが、官能的かというと、そういう感じではないとぼくは思っている。
男と女の営みを様々なメタファーを使い、文学的に描いている。だから、生々しいわけではなく、美しい表現で綴られていて、実に読んでいて、気持ち良いのだ。むしろ、生々しくないからこそ、エロ父ズムを感じるという部分もあるのではないだろうか。そして、文章の中に余韻があるところも魅力のひとつだ。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<青色夏休暇>
KEN'S NIGHT 1st Bonus Track Shine ※ラメ入り