CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 285th ジェントルマン

 母は束縛される人となった。彼女は、自分をついばんでは去って行く男たちとの過去に倦み疲れ、誰かのものとなるのを切望していたのだろう。がんじがらめにされて楽になりたかったのだ。そこには、もう、何も選択する迷いも必要もなく、ただ身を永遠にそこなわれない、と思い込んだことだ。流れる時間の中の些細な要因で、それは、あっと言う間に姿を変える場合もあるというのに。
山田詠美「ジェントルマン」
『ジェントルマン』より

ゲイを主人公としたピカレス小説「ジェントルマン」にも、様々な人間模様が描かれている。
そして、これは、主人公の夢生が母親のことを回想するシーン。
そして、なるほど!と納得してしまうのだ。
いろんな男と浮名を流す生活に疲れ、誰かひとりから束縛されることで、心の安定をはかるということは、とても理解できることでもある。
それは他人から見ると、真の愛情とは言えないかもしれないが、でも、本人がそのことで安定するのであれば、それもありなのかなと。
ぼくの周りにもそういう知らず知らずのうちに束縛を求めてしまう友だちがいるのだが、彼らの気持もなんとなくわかるなと、この文章を読んで思った。
【DATA】
山田詠美「ジェントルマン」
講談社文庫『ジェントルマン』
KEN'S NIGHT M5レフィル<美酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 3rd Track 04 Lullaby of Birdland ※ラメ入り