CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

小説『アニマル・ロジック』

Day 188th アニマル・ロジック

本当に人種差別をしない白人の見分け方は、彼らの身内とファックして反応を見ることだって! 私には最初から解ってたわ。ダディだって生きてたら同じよ。人格者の振りしたって、娘が黒人と寝るのは嫌なのよ。貧しい黒人を憐れむことは出来ても、あんたなんか…

Day 169th アニマルロジック

スージーが夫と抱き合う時、彼女の精神は肉体より肥大し過ぎているのだ。そして、ヤスミンとこうする時、体の感覚は心の大きさを上まわる。同じ大きさでなきゃ駄目よ、というように、ヤスミンは、優しく甘い言葉でスージーの体を誉める。それは、とろりと溶…

Day 137th アニマル・ロジック

「終わった後に吐くことすらあるわ。その時、ようやく思い出すの。ああ、私の体と心は一緒だわって。肉体的な不快感と自己嫌悪がひとつになって、私っていう人間を作っているんだって思うの。スティーヴに抱かれている時は、体と心が完全に分離してるの。と…

Day 127th アニマルロジック

生理的に白人が嫌いだ。生理的に黒人が嫌いだ。そこに理由などない。でも、理由をつけたがるんだな、人間は。そういう時に人種という言葉は便利だ。しかし、それと憎むべき人種差別ってのは別物のように私は感じているのだが。どうも解らない。『アニマルロ…

Day 96th「アニマル・ロジック」    

支配下にあるのを実感するには、彼の体の下でもがくのが一番適している。つかむものが枕しかないと気付く時、彼女は奴隷の恍惚に身をゆだねるのだ。しかし、彼女はとうに知っている。自分の背中に重なるのが、もしも他の男なら、その男が重い枷ではなく柔ら…

Day 35th「アニマル・ロジック」

誰だって、どこかに棲みついている。魚が海や川に棲むように。ライオンがアフリカの大地に棲むように。憎しみや愛情が人の心に棲むように。 山田詠美「アニマル・ロジック」より 山田詠美初の書きおろし長編小説「アニマル・ロジック」は、差別について真っ…