CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

小説『無銭優雅』

Day 200th 無銭優雅

時代のギャップを魅力として持ち上げることも不可能。つまり、手持ちの有利なカードが年齢の中にないのだ。自分自身に対するのと同じ目線で相手を見詰めるしかない。そして、惹かれる理由付けなどすることもなしに向かい合ってみると、年の違う相手では得ら…

Day 199th 無銭優雅

そして、私は、いつのまにか同い年の男と少しずつ過去を作り始めている。あの時、似合いの男女を形作るのは年齢ではないなあ、と深く頷いた私であったが、同い年というのは、特別な意味を持つような気がしている。何しろ、生まれてから同じ年数を生きて来て…

Day 184th 無銭優雅

待たせた分だけスキップの足取りを軽くしてやって来る。そういう男と親密になりたい。いわゆる大人の恋なんてもん、知らないね。私は、いつだって会いたがっている仲になりたい。山田詠美「無銭優雅」幻冬舎文庫『無銭優雅』より 「スキップの足取りを軽くし…

Day 183rd 無銭優雅

来ない待ち人は、恋の対象から外れて行く。今にも私の許にやって来る、その姿が明確に描けない人には熱中出来ない。片想いの出来ない女。それが私だ。山田詠美「無銭優雅」幻冬舎文庫『無銭優雅』より 以前にもこのブログで紹介した部分なのだが、その後に続…

Day 162nd 無銭優雅

こうして、ひとりの男を待つのはいいもんだ。確実に帰って来るであろう男の不在は、何よりの鎮静剤だ。私は帰って来るかどうか解らない人を待ち続けた経験が何度かある。その時の焦燥感は耐えがたいものだったけれども、やがて慣れた。それと同時に、その人…

Day 16th「無銭優雅」

栄は、どんどん、私に愛情を使わせる。湯水のように無駄づかいさせる。けれども、私は、いつだって潤ったままだ。何故なら、彼自身も都合の良い男になって、私に愛情を注ぎ込むのをやめないから。人のために自分を差し置くのを信条とするような出来の良い人…