CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

小説『つみびと』

Day 103rd「つみびと」

生きて行くのなら、それが良い。死んで行くのなら、それも、また良し。そんな心持ちで辿り着いたのは、廃屋めいた納屋だった。私は、その隅にムシロを重ねて自分の寝ぐらを定めた。 「つみびと」中公文庫『つみびと』より 日経新聞の夕刊に連載され、社会問…

Day 87th    「つみびと」

それなのに今、あえて混乱しようにも出来ないほどのすさまじい静寂が自分に忍び寄ろうとしている。ふと作業の手を止めたりした時に、そのことに気付いてしまうと叫び出したくなる。まさに、ずっと長い間、この瞬間を恐れて来たのだ。蓮音は、ようやく悟った…

Day 37th「つみびと」

子供の名前を考える時、ほとんどの親が子の幸せを願うものだと思う。あれこれと迷いながらも満ち足りている筈だ。この子には明るい未来が待っている筈、と確信に近いものを持って胸を高鳴らせる。たとえ何の根拠もなかったとしても。山田詠美「つみびと」より…