CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

小説『24・7(トウェンティフォー・セブン)』

Day 147th 前夜祭

恋する回数が、人よりも、ずば抜けて多くて、さまざまな人たちと結びつく手管は、きちんと都会風に心得ていて、おまけに、それに決着をつけるのが、とてつもなく上手いために誰も憎むことは出来ない。それが私だった。そんな無責任な女が、ひとりの男を選び…

Day 136th ピンプオイル

私は、ボビーと一緒にいる時ですら、ボビーを思い出して、ぼんやりしてしまうのだ。いつもいつも、彼のして来たことを頭の中でなぞり上げ、少しばかりせつない思いに浸るのだ。山田詠美「ピンプオイル」『24・7(トウェンティフォー・セブン)』より 詠美の…

Day 123rd「ピンプオイル」

濡れた心というのはいいものだ。いつでも涙ぐめる心を持っていると、女の瞳は美しくなる。「ピンプオイル」『24・7(トウェンティフォー・セブン)より 山田詠美はデビュー当時、実に多くの男女の恋物語を描いてきた。そのどれもが、当時としてはとても新鮮…

Day 97th「ピンプオイル」    

涙は虫眼鏡の役割をはたして彼の爪を拡大させる。こんなにも彼の爪が大きかったのかと気付くと同時に、またもや涙は盛り上がる。「ピンプオイル」 幻冬舎文庫『24・7』より 文庫本の帯には、「山田詠美が描く、不慮の事故というべき大人の恋。」というキ…

Day 50th

それにしても、いつ彼らは心を通いあわせたのだろう。言葉はかわされなかったはずだ。もし、話をしたのなら、ぼくが目を覚まさないわけがない。それでは、見詰め合っただけで恋に落ちたのだろうか。そんなことがあり得るのだろうか。金色のクリームだ。彼は…

Day 34th「ヒンズーの黒砂糖」

恋は、おいしいお酒や洒落た会話などから生まれるのでは決してないのだ。いつも、それは、うっかりしていたら、何かが心に引っ掛かってしまった、というような偶然から端を発するのだ。 「ヒンズーの黒砂糖」より 『24・7』は詠美の初期の短編集なのだが、ぼ…