エッセイ『メイク・ミー・シック』
人は見かけによらない。この見かけによらない人間を、アメリカではクローゼットフリークと呼ぶ。もっとも、これは、ほとんど男と女の間のことに使われる言葉である。清純そうに見える女が、ベッドの中では、大胆な娼婦のように振る舞い、その手練手管に男は…
私は、お酒が好きなのに、酔っ払いが大嫌い。小説に書いたりするくせに、ドラッグスが大嫌い、という困った性格である。どこを見ても、明らかにクラックやってるお兄ちゃんたちに囲まれて、孤独をかみしめる私であった。山田詠美「マンハッタン夜遊びの不便…
食事をしている時、男の子の唇にソースが付いた。私は茶目っ気を出して、そのソースおいしいのと彼の唇に付いたそれを手を伸ばして指ですくって舐めた。すると、その男の子は、にやりと笑って、こう言った。「唇に付いたソースは唇ごと味わわなくてはわから…
素敵で新鮮な会話さえあれば、行き飽きたレストランのディナーテーブルでも、ハンバーガー屋のカウンターでも、楽しいデートが出来るのは当り前だ。この当然のことを忘れさせようとする仕掛人のわなに、どうか、はまってしまわないようにね。「新鮮味の保存…
私は、小説の中でも、最初の出会いの場面で、いつも男と女に目を使わせる。目は口ほどに物を言うとは、昔のことわざだけれど、ほんと、そう。目は人間の体の器官の中で、一番、動物的な光を放つ部分であり、また、何よりも人間味を滲ませる部分でもある。生…