CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 261st 熱帯安楽椅子

 このようなお遊びを私は今まで文字に変えてお金を稼いで来た。それはとても許しがたいことだと人々の目には映ったことだろう。けれど、彼らにはどうすることも出来なかった。彼らは私を特別だと思っていたし、そして、私が好きだった。私の行動、そしてこのふしだらな指がペンを手込めにして生み出す数々の悪事をどうしても知りたいと思っていた。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

山田詠美の『熱帯安楽椅子』が面白いのは、主人公が、まるで山田詠美本人をモデルとしているのではないかと思わせるような設定であることだ。だから、読者は、体験者の談話としてこの作品と対峙することになる。だから、よりリアリティを持ってこの作品の隅々まで心に沁みて来る。
もちろん、事実とは異なる部分は数多あると思われるが、でも、この作品は、実際に山田詠美がバリ島に行った時に書いた作品であるので、あながちまったく起こりえないこととは言い切れない。
そのフィクションとノンフィクションの境界線があいまいなところが私小説の醍醐味であり、山田家みの作品にはそういう作品が多く、あれこれと考えながら読み進める楽しみがある。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<海辺夏休暇>
KEN'S NIGHT 3rd Track 10 Unforgettable ※ラメ入り