CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 266th 熱帯安楽椅子

 私はワヤンに抱かれ続けた。夜が明けるまで。彼は私を胸や腕や肩で抱く。そして、私は彼を溜息や叫びや快楽を訴える表情で抱く。私は男をそうして抱くのが好きだ。私の体は、とても饒舌になる。シーツから浮き上がった腰。彼の髪を梳く指。汗で毛の数本を引き止めて置くうなじなど。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

詠美の小説を読んでいて気持ちの良いのは、女性が決して受け身でないこと。セックスに関しても、自分から男性を楽しませようとしているし、二人でセックスを作り上げようとしている。そういうところが多くの女性たちに支持される理由なんじゃないかと思う。
ワヤンは自分を肉体を使って抱く、そして私はそれに対して言葉や表情で応じ、そして、それによって、ワヤンを抱く。そういう男女が同じように快楽に対して真摯であるところに、ぼくは共感を覚えるのである。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 3rd Track 07 As TIme Goes By ※ラメ入り