CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 254th 熱帯安楽椅子

 太陽は真上にある。デンパサール市内に入ると急に空気は動き始める。果物籠を頭に載せた女たちが歩きまわり、甘い匂いを振りまいている。子供たちは路上にしゃがみ込み臓物のスープを啜り上げる。その強烈な匂い。私は好奇心に駆られて運転手を促して車を降りて歩きまわる。そこには、ありとあらゆる匂いがある。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

山田詠美の『熱帯安楽椅子』は世界でぼくが一番好きな小説なので、年柄年中、読み返している作品なのだが、ストーリーはもう頭に入っているので、適当にページを開き、たまたま開いたページを読むようにしている。この小説はどのページを読んでも、何かしら心に響く流麗な文章と出会えるので、気付くと、いつのまにか読み込んでしまっているのだ。
特に夏から秋にかけてこの作品を読むと、その時の気候などと一緒に楽しむことができるので、おすすめ。だから今月も『熱帯安楽椅子』を特集したいと思っている。
さて、今日からの場面は、主人公がデンパサールというバリ島の中心地の市場に行くシーンから。
このシーンを読んでいるだけで、あの南国の市場の独特のまったりとした雰囲気が甦って来る。
特にぼくは何度もバリ島には行っているので、よりリアルに思い出すことができる。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<青色夏休暇>
KEN'S NIGHT 3rd Track 04 Lullaby of Birdland ※ラメ入り