CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 231st 熱帯安楽椅子

自分の外側にあるものたちに腹を立てて、その後、絶望すること。それはばかげている。私の手の下の麻のテーブルクロスや黄ばんだコーヒーのためのクリームには何の責任もないのだから。絶望のみなもとは私の内だけにある。それでいい。周囲のものたちに見捨てられる幸福を私は今、味わっている。目を見開いた私には、目の前にあるものしか見えない。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

ここまでの一連の流れをおさらいするかのような部分です。目を閉じている時は、記憶によって目に見えないけれども、心に浮かぶ思い出したくもないことを思い出してしまう。でも、それはばかがていることで、目を開ければ、それらのことを考えずに、目の前に広がるものだけを見ていれば良い。ということをここでは言っているのだと思う。
これもまたメタファー的な表現で、この一連の文章はこれでもか、これでもか、というくらい、そのメタファーを楽しむところに醍醐味がある。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<海辺夏休暇>
KEN'S NIGHT 1st Track 07 Stardust ※ラメ入り