CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 257th 熱帯安楽椅子

蜂蜜は巣ごと新聞紙の上で売られている。お尻を穴から出したまま死んでしまった蜂たち。蜜にくるまっているおいしい死骸。私もそのうち、きっとそういうふうになる。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

このシーンも読者に強烈な印象を残す。『熱帯安楽椅子』に漂う退廃的な雰囲気と、ちょっと自堕落で、厭世的な部分がこのような文章から読み取ることができる。
この作品全体に、「死」の影がそこはかとなく漂っているのだが、それは、メタファーとして「死」でもあり、実際の「死」の予感のようなものでもある。
それは作品を読み進めて行くうちにわかるのだが、そういった雰囲気がより「生」(性)というものを色濃くするのではないかとぼくは思っている。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<青色夏休暇>
KEN'S NIGHT 3rd Track 05 A-Tisket, A-Tasket