私は口がきけなかった。私はこの島の夕陽を知っていたが、夕陽の忘れものを知らなかった。波は砂を舐めて動き、転がる金の雫は夕暮れの闇に混じって藍色になる。金箔は足許ではかなくたゆたい、私は泣きたくなる。山田詠美「熱帯安楽椅子」『熱帯安楽椅子』…
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