CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 234th 熱帯安楽椅子

 卵は目を閉じて微笑する。私は目を開けたまま微笑する。甘いオレンジのプレザーブ。私はパンをかじりコーヒーを啜る。シャンペンの泡は舌の上で消え、喉許を親切に通り過ぎる。すべては幸福に見える。すべてが幸福に。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

この場面も大好きな場面。
シャンペンの泡が下の上で消えるとか、そこからつながる、すべてが幸福に見えるというところとか、本当に詠美の文章は描写が見事だし、実感としてわかるように書いているところがすごい。
また、冒頭の卵の目と自分の目の対比なども解り易いし。こういう想像力を掻き立てるような場面がこの作品にはたくさんあるから、何度読んでも没入感が大きいのだと思う。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<海辺夏休暇>
KEN'S NIGHT 2nd Bonus Track (They long to be) Close to You