CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 188th アニマル・ロジック

本当に人種差別をしない白人の見分け方は、彼らの身内とファックして反応を見ることだって! 私には最初から解ってたわ。ダディだって生きてたら同じよ。人格者の振りしたって、娘が黒人と寝るのは嫌なのよ。貧しい黒人を憐れむことは出来ても、あんたなんか彼らを助けらんない。だって、おんなじ人間として見てないんだもの。娘とセックスが出来る体だと思ってないんだもの!!
山田詠美「アニマル・ロジック」
『アニマル・ロジック』より

『アニマル・ロジック』は山田詠美初の長編書き下ろし小説で、文庫本もものすごく分厚くて、しかも登場人物が多いので読み進めるのが大変な作品だけど、今だからこそ多くの人たちに読んで欲しいと常々思っている。(ここでも散々書いているけどね)
差別とは何か、という根本的なことを突き付けられている気がする。
いろんな人間関係における差別を、様々なエピソードとともに紹介していて、そこに詠美なりの考察が血液に潜む目に見えないものの視点を通して書かれている。
これって、様々な場面で言えること。
例えば、最近話題のLGBT問題。
数年前からLGBTに偏見のないストレート(異性愛者)のことをアライと呼んで連帯感を示すことが多くなったけど、なんかね、上記の文章を読んでいて、そんなアライの人たちのことを思っちゃった。
「私たちはあなたたちのことを受け入れますよ」と言いつつ、それって、当事者からすると逆に差別にとらえられることもあり、「あんたたちにあたしたちの何が解るっていうのよ、受け入れてもらわなくて結構よ!」と思うことが多々あるのね。
差別というのは良くないことだけど、でも実際に「何が差別なのか」というその基準がまちまちで、そこが解っていないと、「差別は良くない」なんて言えないとぼくは思うの。なんでもかんでも差別になっちゃう。
この前も、ゲイの出会い系アプリでとある男子とやり取りが始まった。
最初はちょっと興味があったものの、なんか会話がかみ合わないところがあり、まぁ、リアルすることはないかなと思い始めたところで、彼が「ぼくは外国人ですけど良いですか?」と聞いてきたのね。
うーん、悩んだ。
別にあなたが「外国人であるかどうか」ということはぼくには関係のない話で、やり取りがちょっとちぐはぐだから、それほど親しい間柄にはならないかなと思っただけなのよ。
でも、それをどうやって伝えたら良いのかがわからない。
「外国人であることは全然気にしないよ」と伝えたものの、「かといってリアルする気はない」と言えず。
こういうのって、本当に難しいよなって、詠美の上記の文章を読んで思った。

【DATA】
山田詠美「アニマル・ロジック」
新潮文庫『アニマル・ロジック』
KEN'S NIGHT M5レフィル<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Bonus Track Frozen