CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 42nd「アイダに似てる」

 あなたの人生に何があっても、絶対に私が守ってあげる。そういう気持を肉親以外の人間に持つということは、滅多にないことだ。それが、たとえ、愛している男でもあっても、である。一生の内に、そんな気持を持つことのできる他人に何人、出会えるか解らないが、とにかく、そういう人を連れて、ニューヨークに滞在して来た。

山田詠美「アイダに似てる」より

『Amy Says』は、それまで雑誌などで発表されたものの、単行本としてリリースされなかった作品を集めた作品集である。
この作品は山田詠美の初期の頃に書かれたエッセイなのだが、この冒頭シーンがいかにも詠美らしくて、国会図書館山田詠美の文献調査をしている時にこの作品を見つけて読んだ時は、なんでこれが単行本で出ていないのか疑問に思ったほど。
そして、ここに描かれているのは、NYで彼女が遭遇したある差別的な態度を取った白人のエピソードである。
日本ではあまり露骨な差別というものは感じることが少ないが、NYでは日常的になっている人種差別を詠美は肌で感じ、それに伴う、様々な自分の感情や周りの人たちの反応などを彼女なりの視点で考察している。
こういったことが後に「アニマル・ロジック」という長編作品に繋がっていくのだろう。
ちなみに、「アイダ」とは山田詠美のバイブルとも呼ばれているゲイでもあった黒人作家、ジェームズ・ボールドウィンの『もう一つの国』に登場する女性である。

【DATA】
山田詠美「アイダに似てる」
新潮文庫『Amy Says』
KEN'S NIGHT M5レフィル<山荘冬休暇>
KEN'S NIGHT 2nd Track 7 Stars Fell on Alabama