CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 96th「アニマル・ロジック」    

支配下にあるのを実感するには、彼の体の下でもがくのが一番適している。つかむものが枕しかないと気付く時、彼女は奴隷の恍惚に身をゆだねるのだ。しかし、彼女はとうに知っている。自分の背中に重なるのが、もしも他の男なら、その男が重い枷ではなく柔らかな毛布にも成り得ることを。あたかも犬のように尻っ尾を振る。その振り方も、背中にかかる圧力の違いによって、どうにでも変わるのだ。
「アニマル・ロジック」    新潮文庫『アニマル・ロジック』より

原稿用紙1000枚分の書き下ろし小説『アニマル・ロジック』は、山田詠美が差別というものに真っ向から取り組んだ意欲作である。
人種差別というと、白人社会における黒人やアジア人など有色人種への差別が中心となるわけだが、山田詠美はそういった、いわゆる我々日本人が思い描くようなわかりやすいステレオタイプ的な差別だけを描いているわけではない。
この作品では、黒人同志でも差別をし合うし、逆にことさらに自分たちは差別されていると声高に叫び、理不尽な行動に出る黒人のことも描いている。
この場面に登場するフレディもまさにそんな差別されていることに常に憤りを感じ、そのことで世間に八つ当たりをしている黒人男性である。
ヤスミンはそんなフレディの考え方に同意できないながらも、彼の体は彼女にとって快楽を与えるという理由だけで彼と付き合っていた。しかし、ある事件をきっかけに彼女は彼の許を離れるのだが、そのいきさつが実に痛快で、その二人の衝撃の結末にこの作品の主人公であるブラッドにブラボーと叫びたくなる。
<解説>    
【DATA】    
山田詠美「アニマル・ロジック」    
新潮文庫『アニマル・ロジック』    
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Track 06 My Favorite Things