CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 167th 高貴なしみ

 健一のような恵まれたやつが、おれに魅かれた訳は、よく解る。彼は、おれとは、まったく反対に、失ってはならないものを多く持ち過ぎていた。今にも、息が止まりそうな幸運に取り巻かれて、あいつは、おれの存在に救いを求めていた。健一は、、おれと行動を共にしたがり、おれの何事も風のように受け流すという方法を学びたがっていた。
山田詠美「高貴なしみ」
集英社文庫『色彩の息子』より

詠美の作品を読んでいると、しばしば境遇のまったく登場人物がかかわりを持つという設定がしばしば出てくる。「蝶々の纏足」もそうだし、「ファーストクラッシュ」でもひょんなことからまったく違う環境で育った男の子が三人姉妹の家にやってくることから生じる家族の歪を描いている。
その登場人物たちの対照的な立場から生じる、さまざまな人間模様に詠美は興味を持っているし、そこに詠美が常に抱いている人間同志の関係の面白さが潜んでいるのかもしれない。
ぼくは上記の文章を読んでそんなことを思った。
【DATA】
山田詠美「高貴なしみ」
集英社文庫『色彩の息子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩色音楽集>
KEN'S NIGHT 1st Track 09 Moonlight Serenade