CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 55th「瞳の効用」

 私は、小説の中でも、最初の出会いの場面で、いつも男と女に目を使わせる。目は口ほどに物を言うとは、昔のことわざだけれど、ほんと、そう。目は人間の体の器官の中で、一番、動物的な光を放つ部分であり、また、何よりも人間味を滲ませる部分でもある。生まれつき備わった直感と、それまで生きて来た時間の経過と共につちかわれて来た賢さが同居する。恋を始めるのに、これを活用しない手はない。
「瞳の効用」『メイク・ミー・シック』より

メンズ・ノンノに連載された連作エッセイ。単行本はまるで写真集のようになっており、山田詠美のモノクロの写真とともに綴られている。
若い男性読者向けのエッセイで、詠美さんらしい、ちょっとしたアドバイスが小気味の良いリズムで書かれており、ぼくは当時、夢中になって読んだ。
ちょうどぼくも二丁目で飲むことを覚えた頃で、この『メイク・ミー・シック』の文庫本をポケットに忍ばせて夜遊びをしていた。
だから、今でも若い男の子と知り合うと、本当の意味でのかっこいい男になって欲しいから、この本をプレゼントしているのだが、どうやら最近絶版になったらしく、文庫本がどこにもなくて、悲しい想いをしている。集英社文庫さん、再販、どうぞよろしく!
そして、この「瞳の効用」はぼくの大好きなエピソードでもある。山田詠美の作品を読んでいると、しばしば、そういう視線を描いた場面に出くわすので、ぜひ、そういう視点で作品を読んでみて欲しい。

【DATA】    
山田詠美「瞳の効用」
集英社文庫『メイク・ミー・シック』
KEN'S NIGHT M5レフィル<甘夢摩天楼>    
KEN'S NIGHT 1st Track 08 Smoke Gets in Your Eyes