CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 166th 紙魚的一生

 そもそも本を読む男は知性にあふれていると思い込んだのが私の過ちだったのである。知性という代物について漠然と考えてみる時、私は、いつもうっとりとしていた。広い視野と深い考察を内包し、決して常軌を逸することなく静かに重みのある言葉を紡ぎ出し、本能をなだめながら上質のエロティシズムを香り立たせる。私は知性をほとんど生きもののように扱い、それに焦がれていたのであった。
山田詠美紙魚的一生」
『タイニーストーリーズ』より

紙魚(しみ)とは、読んで字のごとく、紙を餌とする虫のことで、魚のような見た目からそう呼ばれている。そんな紙魚を擬人化した作品がこの「紙魚的一生」。タイニーストーリーズは以前にもご紹介した電信柱を擬人化した作品もあり、ちょっとコミカルな作風が、面白い。
この作品も、山田詠美らしい視点から書かれているし、読書家の詠美にしか書けないユニークな作品といえる。
特徴的なのは、この作品、最後まで段落がないために、ずっとそのページが文字で埋め尽くされているように感じられるのです。そこもまた視覚効果を狙っていると思われ、作品の面白さのひとつと言えるだろう。
【DATA】
山田詠美紙魚的一生」
文春文庫『タイニーストーリーズ』
KEN'S NIGHT M5レフィル<夜景摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Track 08 Smoke Gets in Your Eyes ※ラメ入り