CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 139th GIと遊んだ話(一)

煙草のけむりや人いきれで汚されていないクラブは、男と女を親しくさせない。もう何度か寝たことのある間柄なのが嘘のようだった。二人はブラインドデートで無理矢理来させられたティーンネイジャーのようにぎこちなく振舞っていた。
山田詠美「GIと遊んだ話(一)」
『タイニーストーリーズ』より

いつも思うのだが、山田詠美はちょっとした何気ない表現の中にも、ぼくたちをハッとさせるものがあり、そういうフレーズに出会うと、思わずメモをしたり、線を引いたりしたくなる。上記の表現もまさにそう。
まだ早い時間のクラブの空気感をこんな風に表現する人なんて、詠美ぐらいしかいないし、それを実感しているからこそ、伝わってくるものがある。
ぼくはお酒は飲めないけど、ゲイバーなどに良く遊びに行く。
そんな時も、早い時間というのは、なかなか空気がまだ夜の空気になっていなくて、「まだ温まってないな」と思うことが多い。それが、だんだんと人が増え、会話が増してくると、どんどん空気が熱を帯びてきて、ゲイバーらしくなってくる。
ぼくは素面だから余計にその空気の変化を感じることが多く、その変化を楽しみにゲイバー通いをしているのかもしれないと、この文章を読んで思った。
【DATA】
山田詠美「GIと遊んだ話(一)」
文春文庫『タイニーストーリーズ』
KEN'S NIGHT M5レフィル<美酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Track 02 Autumn in New York