CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 133rd 電信柱さん

さくら草は、文字通り、めしべの芯に蜜を滲ませているようです。開いた花の数は四つになりました。美しい盛りです。でも、美しいだけじゃない。この子の話すことといったら、それはそれは、ユーモアに富んでいるのです。初めの内は、たどたどしさを残していた電信柱語でしたが、もうほとんど完璧です。わたくしは、笑わせてばかりでした。さくら草がこんなにもおちゃっぴいさんだったとは!
山田詠美「電信柱さん」
『タイニーストーリーズ』より

電信柱とさくら草の短い恋愛を描いた掌小説である。こういう、ちょっとファンタジーめいた小説を山田詠美が書くのは非常に珍しいと思うのだが、これがまた実におもしろくて、思わず笑いながら読み進めていってしまう。
そして、このラストがまた鮮やかだし、伏線もちゃんと回収されていて、あぁ、やっぱり山田詠美は短編小説の名手なんだなぁと思うのである。
【DATA】
「電信柱さん」文春文庫『タイニーストーリーズ』
KEN'S NIGHT M5レフィル<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Track 08 Smoke Gets in Your Eyes ※ラメ入り