CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 138th NEWSPAPER

 男と女の間に存在する嘘が、その恋に役立つことなどあるだろうか。賢い人は、相手を傷つけないためにつく嘘もあると言う。はたして本当にそうだろうか。私に関して言えば、嘘は破局をせき止める一時しのぎの堤防にしか過ぎない。つまり、やがてはその堤防は崩れて関係は土砂の中に埋まり、二人は水に溺れて息を詰まらせるということだ。
山田詠美「NEWSPAPER」
『120%COOOL』より

例えば…彼氏がいるのに、他の男とデートをしたりエッチをしたりしたとする。
そのことば相手にばれそうになった時、嘘をついてごまかすか、正直に話すか。
時々、そんなことが話題になることがある。
ぼくは個人的には、浮気をするのは男同士だから仕方ない(あ、ぼくは男性同性愛者なので、その立場で考えますね…念のため)。
でも、だからといって、それをあからさまに相手に告白しちゃうのは、どうかなと思うのだ。
いわゆるオープンリレーションシップというやつね。
浮気をするなら、相手にわからないように、こっそりとしなさい。その代わり、絶対にそのことを誰にも言わないのが条件。誰かに言った途端に、それは不誠実になるから。
ずっと秘めなさい、そういうことは。
という考え方。
これもまた詠美がこの小説で言っている「相手を傷つけないためにつく嘘」に当たるのではないだろうか。
しかし、それがいつかどうしようもなくなって、崩れてしまうこともまた、良くある話で、ついつい自責の念に囚われて誰かに話してしまったり、ついついぼろが出て、相手に伝わってしまったりする。そういうことも含めて、この詠美の文章は真理だよなぁと思うのだ。
【DATA】
山田詠美「NEWSPAPER」
幻冬舎文庫『120%COOOL』
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩色音楽集>
KEN'S NIGHT 1st Track 03 Fly Me to the Moon