CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 140th ファーストクラッシュ

 私は、不憫な力を労わりたいのだ。唇で触れて、涙を流していたらぺろぺろと舐める。獣の毛づくろいみたいな感じ。その想像をするとくらくらする。興奮の極みで目眩によるくらくら。それを感じたいがために、力を不憫な状態に置きたいのだ。
山田詠美「ファーストクラッシュ」
『ファーストクラッシュ』より

突然家族として家にやってきた少年、力(リキ)を巡る三姉妹の物語。
特殊な環境に置かれた家族の話なのだが、それでも、あちこちに詠美さんらしい視点があり、そこがこの小説の面白さにもなっている。
それにしても、屈折しているよなぁ。
でも、そこが詠美さんの小説の登場人物らしくて、ぼくは逆にそういう部分があまり感じない人間なので、人間観察をするという意味で面白く読んでしまうのだ。
【DATA】
山田詠美「ファーストクラッシュ」
文春文庫『ファーストクラッシュ』
KEN'S NIGHT M5レフィル<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Track 01 Blue Moon