CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 145th モンブラン、ブルーブラック

 優子は、目の前の光景に、すっかり混乱していた。出会ってから、ずっと、輝かしい指揮棒のように尊く思えた黒い万年筆が、五寸釘に見えた。薫子の体が、それを振り降ろすたびに、ゆらゆらと揺れる。
山田詠美モンブラン、ブルーブラック」
『タイニーストーリーズ』より

山田詠美は今でも手書きで原稿を書く。その手書きの原稿をFAXで出版社に送り、それを編集者がパソコンなどで清書している。しかし、詠美が原稿を書く時は、ぺんてるの黒のサインペンだ。万年筆は使ったことがないということをご本人から聞いたことがある。何かの授賞式の時に贈呈されたらしいのだ。でも、そんな山田詠美が万年筆について書くと、こんなふうに表現されるんだ!とこの作品を読んで思った。
ちなみに、今、モンブランでは「ブルーブラック」という名前のインクは出ていない。恐らく「ミステリーブラック」か「オイスターグレー」という名前に変わり、色味も当時のものとは恐らく違っているだろう。
【DATA】
山田詠美モンブラン、ブルーブラック」
文春文庫『タイニーストーリーズ』
KEN'S NIGHT M5レフィル<和風三色幕>
KEN'S NIGHT 1st Track 12 Moon River