CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 27th「学問」

 その得体の知れないものの愛弟子になるであろうことを予見したのは、仁美が、わざずか七歳の時でした。後に、心太に、そのことを打ち明けてみたところ、彼は、ゆるぎない調子で言ったのです。じゃあ、おれは、兄弟弟子にに当たる訳だな。惚れ惚れとしました。なんて頼もしいんだろう。思えば、出会ったその日から、この人は頼もしかった。私、絶対に、テンちゃんに付いて行く。

山田詠美「学問」より

山田詠美の「学問」は、地味な作品ではあるが、じっくりと読み進めていくと、非常に面白い作品だと思う。
上記の文章は作品の冒頭シーンなのだが、ここで描かれている「その得体の知れないもの」というのが何か、というのがこの作品の大きな主題である。
そして、果たして「学問」とは一体なんなのか。
その答えはぜひこの作品を読んで皆さんに探っていただきたいと思っている。
この作品を改めて読み直してみて、ぼくは河野多惠子の「秘事」という作品を思い浮かべた。その中で描かれている「秘事」というのは一体何か、というのを読み解いていく楽しみがあるのだが、詠美の「学問」も同じような楽しみ方ができるように思っている。
この作品が発表された時、あまりにも興奮したぼくは詠美さんの自分なりの「学問」を手紙にまとめて送った記憶がある。
そして、「その得体の知れないもの」の正体も。
考えてみたら、ぼくも仁美と同じ年ごろに「その得体の知れないもの」の愛弟子になり、今でも愛弟子のままだ。だから、心太と同じ兄弟弟子、いや、姉妹弟子なのかもしれない。
ともあれ、人間の性を追求し続けている山田詠美を語る上で、欠かせない作品であることは確かだ。

【DATA】
山田詠美「学問」
新潮文庫『学問』
KEN'S NIGHT M5レフィルM5レフィル<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Track10 Moonlight in Vermont