Day 24th「YO-YO」
クラブJの側にあるホテルのシーツの隙間で、二人は、ようやく打ち解けた。ひと息ついて、くすくす笑いが始まると、恥も外聞も失くなる。バーでの約束された会話など、途端に色褪せる。感じたことしか口にしない。感じたいことしか口にしない。一番難しいのは、このことだと思う。
山田詠美「YO-YO」より
「YO-YO」は、男女の駆け引きを描いた作品だとぼくは思っている。駆け引きというのは、ありがちな「恋の駆け引き」なんかではない。男女関係における駆け引きだ。
でも、それを冷静に描いているところが詠美の作品の面白いところ。
偶然にも文庫本の解説で川上弘美さんがこの作品の、まさにこの箇所を上げて
「感じたことしか口にしない。感じたいことしか口にしない」と主人公に言わせた小説なんて、ほとんどゼロに等しいのではないか。
と書いているが、まさにその通り。
この作品には、他にもいくつかの棒線を引きたくなるようなフレーズがたくさんあるので、またこのブログで紹介していきたい。
詠美は色々な人間関係についても様々な考察をしているが、この作品集はまさにそんな人間関係について考える際に参考になる短編集だと思う。
【DATA】
山田詠美「YO-YO」
幻冬舎文庫『マグネット』
M5レフィル<彩酒摩天楼>
2nd Track 5 A Night in Tunisia