CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 10th 「明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち」

 人生よ、私を楽しませてくれてありがとう。母方の曾祖母は、九十六歳で息を引き取る間際、愛用のスケッチブックにそう書き残した。そのラストメッセージは、彼女と関わりを持つすべての人に語り継がれて行き、理想的な人生を締めくくったひと言として、羨望の溜息と共に受け止められた、らしい。

 

山田詠美「明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち」より

山田詠美の作品には人の死を扱ったものが意外と多い気がする。そんな死に真正面から取り組んだ作品がこの「明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち」である。人の死というものは、その人との関りが深ければ深いほど、周りの人たちにさまざまな影響を与えることになる。そして、その影響の与え方もその人との関わり方や深さによって異なってくる。その様子を、落雷によって命を落とした長男に近しい人たちの視点で描いている。
冒頭のこの文章に登場する曾祖母のこの言葉は、誰しもが願う幸せな死に方のひとつとしてこの作品の根底に流れている。

【DATA】
山田詠美「明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち」
講談社文庫『明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち』
KEN'S NIGHT M5レフィル<雪原冬休暇>
KEN'S NIGHT 1st Track 05 When You Wish Upon a Star