CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 25th「血止め草式」

 不倫関係のドラマなどを見ていると、愛人が、泣きながら、奥様に申し訳なくて、などと言ったりする。嘘だろ? 申し訳ない気持があったとして、だからこそ、それが二人の快楽を引き立てているんじゃないのか。その瞬間、申し訳なさは、道具である。どうせ泣くなら、それを自覚するくらいに謙虚にならないかなあ、などとひとりごちながら、私は、テレビを見ている。

 

山田詠美「血止め草式」より

山田詠美の作品を読んでいると、時々、ぞっとしてしまうことがある。大人のスリラー小説なんじゃないかと思ってしまうほど。
この作品も非常にスリリングだ。
だって、マンションの隣に住む夫婦の旦那さんと関係を持つ独身女性の話だぜ!スリリング意外の何物でもない。
でも、そんなストーリーの中でも、詠美なりの倫理観というものが描かれている。詠美はしばしばいわゆる世間で言われている「不倫の関係」を取り上げているが、ここでも、その世間で言われている不倫における一般的な感覚に対する疑問が投げかけられている。
そして、そんな不倫の関係に陥った男女の関係を、血止め草、バンドエイドといったアイテムを軸に鮮やかに書いているところに詠美文学の面白さがあると言えるだろう。

【DATA】
山田詠美「血止め草式」
幻冬舎文庫『4U』
M5レフィル<夜景摩天楼>
2nd Track11 What a Diffrence a Day Made