CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 275th 熱帯安楽椅子

私は自分の体の上にある男の皮膚を愛している。そして、その皮膚が生み出す私への愛情を私は愛している。私が彼を愛していると知らせたくて体を反応させる。そして、それを知った彼は自分もそうなのだと伝えたくて体を使って見せる。愛することは気楽だ。そして、暖かい。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

詠美にとって、セックスというのは、男女平等のものだ。男が女を悦ばせるのと同じように、女も積極的に男を悦ばせようとする。そのことが良くわかる文章がこの「熱帯安楽椅子」には随所に現れる。
そして、「愛することは気楽だ」という言葉。これは、昨日も書いたように、「男をひとりだけ選んで愛してしまった」からこそ、そうならないように自分に言い聞かせているのかもしれない。ワヤンというバリ島のホテルで出会った男と関係を持ち、でも、深刻にならないように体を合わせて行く。それは実はとても難しいことなのかもしれない。
体を何度も重ねて行くうちに情が沸くことも多いからね。
詠美のこの作品を読んでいると、そんな愛することの難しさとか、自分の気持と肉欲のバランスのとり方の難しさをいつも感じてしまう。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 3rd Track 11 You and the Night and the Music