CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 267th 熱帯安楽椅子

私は、あの時、自分の心の中で嫌悪と愛情が口づけをかわしながら踊るのをはっきりと見た。そして、それは執着。執着という形で生き延びるのだ。私は、あの時、とても生きていた。望んで生きるということは諦めを知らないということだ。可哀想に。私は今、あの時の自分に心から同情することが出来る。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

初めてこの小説を読んだ時、ぼくは、とにかく、山田詠美にしか書けないような様々な文章に出くわし、夢中になって読み進めて行ったわけだが、この文章にもしびれた。

私は、あの時、自分の心の中で嫌悪と愛情が口づけをかわしながら踊るのをはっきりと見た。

愛情と憎しみというのは、表裏一体だ。好きになればなるほど、相手に対して憎悪や嫌悪が生まれることもままある。それを「嫌悪と愛情が口づけをかわしながら踊る」という風に表現するなんて!これぞまさしく、山田詠美節だとぼくは思うのだ。そして、こういう文章に出会いたくて、ぼくは貪るようにこの作品を読み込み、今に至る。
そして、今でも、それらの文章に感動しっぱなしだ。

【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Track 3 The Girl from Ipanema ※ラメ入り