CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 260th 熱帯安楽椅子

 私が快楽を乗り越えるまで止んではいけない。私は雨にそう言う。私たちの小さな箱には覆いが必要だ。その内側で、空気は濃密になり過ぎて結晶を作る。熱帯のスコールはあくまで毅然としていて、私は少し恥じる。目の前にある湿った肌を吸い取り紙に使う私自身の安易さを。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

車の中で情事にふける二人の様子が引き続き濃厚に描かれている。
文章の隙間から、熱帯のあのねっとりとした空気と、そして、汗のにおいや二人の息遣いが漂ってきそうな文章だ。
ねっとりとした肌の感覚をこのように表現できてしまう、山田詠美の言語感覚にぼくはただただ、唖然としながら読み進めて行く。途中から読んでも、楽しいのはこういう表現に浸りたいからなんだろうな。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<雨景摩天楼>
KEN'S NIGHT 3rd Track 09 Prelude to a Kiss ※ラメ入り