CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 233rd 熱帯安楽椅子

南の国の生暖かい風。ブラインドの代わりを果す椰子の葉。グダン・ガラムは私の香水にある。きっと。私は自堕落な死体になる。あるいは、物解りの良い人形に。腐臭を漂わせない死体になることが、どれ程困難であるかに、まだ私は気付いてはいない。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

ここもまた、メタファーの連続である。
「物解りの良い人形」「腐臭を漂わせない死体」とは一体何の比喩なのか?それは読んでいるうちにわかって来ることでもある。
ひとりの男に執着するというたった一つのあやまちを犯してしまった「私」は、そのことから逃れるようにこの南の島にやってきた。そして、その島で、私は自分の目の前の欲望にだけ忠実になろうとする。そのことをさしているのではないだろうか。
そして、実際にそのように欲望に忠実になった私の姿がこの作品の中では描かれていて、そこに読者は魅了されるのである。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<海辺夏休暇>
KEN'S NIGHT 1st Track 08 Smoke Gets in Your Eyes ※ラメ入り