CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 232nd 熱帯安楽椅子

 私はもののの見えるめくらになる。テラスを行き来する十二インチ程もある蜥蜴、そして明らかに私に興味を抱き始めた制服のウェイターの鳶色の瞳などだけが私の角膜を刺激する。私は微笑することが出来る。朝のピンクシャンペンに酔ったうすら笑いを浮かべる小娘。その印象は私をとても喜ばせる。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

そうそう、バリ島のホテルのレストランって、屋外にあることが多くて、そのせいか、蜥蜴なんかもちょろちょろ見える。蜥蜴などの爬虫類は苦手なぼくでも、ここにくると特に人畜無害なので、(触ることなどはできないけど)意外と眺めていられる。
この場面で面白いのは、「うすら笑いを浮かべる小娘」を客観視しているところ。
視点がこの場面で一瞬変わり、自分を客観視しながらその印象を語っているところが実にユニークだと思う。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<海辺夏休暇>
KEN'S NIGHT 3rd Track01 Blue Skies ※ラメ入り