CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 210th 天国の右の手    

私は恋という枠組みを作り、その内側においてのみ生きる。同情や思いやり、気づかいなどはそこに届かず、まして彼女の罪悪感など、近寄ることすら出来ない。額縁に入れた絵画のような恋。私が欲しいものはそれだけだ。だから私は絵を描く。失った右手で絵具を塗り重ねる。
山田詠美「天国の右の手」
『4U(ヨンユー)』より

姉の恋人とタイのホテルで過ごす右手を失った女性を描いた短篇集なのだが、姉は二人の関係を知りつつも、知らないそぶりをしていて、そのいびつな三人の恋模様を描いているところにこの作品の面白さはある。それがまた南国のホテルが舞台というのも映画的でもあり、どんどん読み進めていける。夏に読みたい短編小説のひとつだが、高校生の課題図書にはふさわしくないので、高校生の皆さんは参考にしないように!
【DATA】
山田詠美「天国の右の手」
幻冬舎文庫『4U(ヨンユー)』
KEN'S NIGHT M5レフィル<青色夏休暇>
KEN'S NIGHT 2nd Track 6 Autumn Leaves