CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 174th 熱帯安楽椅子

 私は小説を書いていた。そして、お遊びが好きだった。私は体に張り付いたドレスを身につけていつも街を歩いていた。それは時折私のピジャマになり、私の体の下でいくつもの皺を作った。
山田詠美「熱帯安楽椅子」
『熱帯安楽椅子』より

『熱帯安楽椅子』は世界で一番好きな小説。
とにかく文章が流麗で、日本語が美しい。様々な比喩で彩られた作品は、濃厚でありながら、詩的だ。
もう、このブログをこの小説のすべての文章で埋め尽くしてしまいたいほど。
二度目の大学での卒論でもこの小説をテーマに書いたし、物語そのものは比較的単純なので、もうストーリーは頭の中に完全に入っている。でも、今でも読み返してしまうのは、その文章の美しさに浸りたいから。
バリ島のあの独特の熱気が行間から伝わってくるのだ。
だから、ぼくはしばしば、この世界に浸りたくなると、文庫本を取り出し、適当な頁を開いて読み始める。そうすると、必ずハッとするような文章に出くわすのだ。
だって、全ページにそういう文章が散りばめられているのだから。
上記の文章もそう。
体に張り付くようなセクシーなドレスをこんな風に表現できる人って山田詠美の他にいないんじゃないだろうか。といつも思ってしまうのだ。
【DATA】
山田詠美「熱帯安楽椅子」
集英社文庫『熱帯安楽椅子』
KEN'S NIGHT M5レフィル<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Bonus Track Thank You for the Music