CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 173rd BAD MAMA JAMA

 出会いの快楽というものがある。マユコは数年間、その快楽をつなぎ合わせてそれまでの人生を送って来た。そして、恋愛の楽しみ方というものを勉強して来たのだ。人は、そんな彼女をすれっからしなどという古い言いまわしで読んだりしたけれど、彼女はまったく気にしなかった。
山田詠美「BAD MAMA JAMA」
『カンヴァスの柩』より

ぼくはお酒が飲めないくせに、ゲイバーで飲むのが好きだ。いつも蚊の涙ほどの焼酎を割りもので割って飲むのだが(お酒が飲める人にしてみれば、「これはお酒ではない」らしいのだが)、なぜお酒が飲めないのにその場にいたいのかというと、やはり自分と性的嗜好が同じ男達と飲むのは無条件で楽しかったりするからだ。
そんな中、たとえば新しいお店に遊びに行くことになった時、いつも少し緊張する。
そのお店がどんなお店なのか、人づてに聞いてはいるけれども、自分ではまだわかっていないし、そのお店のママや常連さんたちはぼくのことを受け入れてくれるだろうか? とか、ぼくもお酒は飲めないなりに楽しめるだろうか? とか、そもそも、お酒があまり飲めないということを理解してくれるだろうか? とか。(昔の二丁目はお酒が飲めないのになんで来るの?という雰囲気があったのよ。)
でもね、そこは亀の甲より年の劫。
去年、ふと、その緊張感が楽しいと思えるようになった。
なぜなら、そんな経験は初めてそのお店に行った時の、たった一回しか味わうことができないから。
二回目からはもう「初めまして」ではないから、最初の一回しかドキドキは味わえないんである。
そう思ったら、もう、楽しくて楽しくて、去年は新しいお店にボトルを入れまくり、今はお酒が飲めないにも関わらず7軒のゲイバーでボトルをキープしている。
詠美の言うまさに「出会いの快楽」に通じるものがあるんじゃないだろうか。
まぁ、内容的には全然違うんだけどね。
【DATA】
山田詠美「BAD MAMA JAMA」
新潮文庫『カンヴァスの柩』
KEN'S NIGHT M5レフィル<和風三色幕>
KEN'S NIGHT 1st Bonus Track The Rose ※ラメ入り