CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 119th「マーク」

「ひとりの男には、必ず、一曲のラブソングと、一瓶の香水の思い出がついてまわるものよ」
「マーク」『フリーク・ショウ』より

元々、ぼくはそれほどソウルミュージックというものに親しみがなかった。しかし、山田詠美と出会ってから、意識してソウルミュージックを聞くようになった。
それと同時に、香水に興味を持つようになったのも詠美の作品の影響かもしれない。
今から30年前。そう、時期的にも今頃の時期だ。ぼくは二丁目での夜遊びを覚えたぼくは、山田詠美の文庫本をジーンズのポケットに忍ばせながら、二丁目のゲイバーに通い詰めていた。
お酒も飲めないのに、お店にボトルを入れて、自分は超薄めにしてもらい、あとはお店の人や友だちに飲んでもらうというスタイルもこの時に覚えた。
そうすると自然とそれに付随して、それまであまり経験したことのないような様々な文化(というほど大袈裟ではないが)に触れるようになった。
香水もそのうちのひとつ。
当時はディオールファーレンハイトが二丁目で一世を風靡しており、さらにカルバンクラインのエターニティ、エスケイプなどをつけているゲイが多かった。
そこにちょうど読み始めた山田詠美の作品群がぼくの人生を彩り始めたんである。
なんというタイミングだろうか。
だから、詠美のこういう文章を読み返すたびに、当時の自分のことを思い出して懐かしくなるんである。
【DATA】
「マーク」
幻冬舎文庫『フリーク・ショウ』
KEN'S NIGHT M5レフィル<方眼円盤集>
KEN'S NIGHT 2nd Bonus Track Frozen