CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 161st カンヴァスの柩

 部屋の中には空もないのに二つの星は輝いていて、それの照り返しでそのうち十個の爪も銀色に輝いている輝き始めて、その頃にはもう彼女の瞳も闇に慣れているから自分の上に重なる黒い絹に反射する月の明りに気づくことも出来る。
山田詠美「カンヴァスの柩」
『カンヴァスの柩』より

バリ島を舞台にした小さな恋の物語。
ぼくもバリ島が大好きで6回も行っているので、あの島の独特の空気を体感として理解しているのだが、詠美のバリ島のシーンを読んでいると、あの空気感が瞬時に自分の体のまわりを包むような気がする。あの島独特の匂い(それは、南国のフルーツだけではなく、雨上がりの土や緑の匂いに混じったガラムタバコの香りだったりする)が文面から感じ取れるし、他の南国(沖縄とかタイ、サイパン、グアム、様々な南国にぼくは行っているけれども)とはまったく違う、あの島でしか味わえない感覚が文章の隙間から漂ってくるのだ。
ぼくは上記のように現地の子と恋仲になったことはないけれども、きっとこんなふうに感じるのだろうなと詠美のこういう文章を読んでうっとりしてしまうのだ。

【DATA】
山田詠美「カンヴァスの柩」新潮文庫『カンヴァスの柩』
KEN'S NIGHT M5レフィル<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Track 04 Night and Day