CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 117th「百年生になったら」

まだ見ぬ幸福の予感は、人をとてつもない充足にいざなう。冬のさなかに見つけた春の花の固いつぼみが、常に彼女の内にいて、花開くのを待っている。
「百年生になったら」
文春文庫『タイニーストーリーズ』より

『タイニーストーリーズ』は様々なタイプの短編が収められた短篇集だ。
デビュー当時の山田詠美の周辺で起きたであろうことをベースとした作品群や、その後の山田詠美の短編にしばしば見受けられるような、ちょっとホラーチックな作品まで、実にいろいろなタイプの作品が掲載されている。
この「百年生になったら」は、夫や姑、娘や息子たちに翻弄される主婦が、とある小さな事件をきっかけに一念発起して、犯罪者になるべく生まれ変わるという話。
実に爽快な結末と思いきや、それでもやっぱり息子に対してだけは他の家族とは違う反応を示すことになるという話で、見事なオチに膝を打つ。
詳細は書けないのだが、ぜひ、そのオチを味わって欲しい作品だ。
さて、上記の部分はそんな彼女の心境の変化の一片を描いているのだが、山田詠美らしい文章だと思う。    
【DATA】
「百年生になったら」
文春文庫『タイニーストーリーズ』
KEN'S NIGHT M5レフィル<流星摩天楼>
KEN'S NIGHT 2nd Track11 What a Diffrence a Day Made