CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 159th 賢者の愛

 おや、いつのまにか、喜劇と悲劇の境目が解らなくなってしまいましたね。まあ、よろしいでしょう。元々の出所は、たぶん一緒。人間の業が重なり合って起こすつむじ風が、その発端であるに違いないのです。
山田詠美「賢者の愛」
『賢者の愛』より

谷崎潤一郎の「痴人の愛」のオマージュ的な作品。
ちょっと喜劇っぽい雰囲気を持たせながらも、実は非常に怖い面も持っていて、そこがこの作品の持ち味なのではあるが、それを象徴するような文章が上記の文章だ。
人生というのは、喜劇と悲劇が表裏一体だと思う時がしばしばある。ある人にとっては悲劇的なことが、実は第三者にとっては喜劇に見えたりするし(最近の政治家なんて、そんなのの連続だと思いません?)。
それこそが、まさに「人間の業が重なり合って起こすつむじ風」で、詠美さん、うまいこと言うなぁと感心してしまう。

【DATA】
山田詠美「賢者の愛」
中公文庫『賢者の愛』
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩酒摩天楼>
KEN'S NIGHT 1st Track 02 Autumn in New York