CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 157th それは腹わたの問題

 そう感じた私であったが、「ギャルズライフ」の進む方向はいただけいないと思っていた。煽情的なだけで、ちっとも魅力的ではなかった。性欲は肉体だけが支配するものではないのに。こんなにつまらない男女の交わりを教えたって何にもなんないよ。小学校の頃に読んだ婦人雑誌の夫婦の営み指南の方が、よっぽどためになった。
山田詠美「それは腹わたの問題」
『私のことだま漂流記』より

詠美の自伝的小説には、詠美が漫画家としてデビューした当時のことも書かれている。その時、彼女は色々と嫌な想いもしているのだが、その時のことを客観的に、そして、冷静に分析していて、そこに魅力を感じる。
そして、上記の文章の中の「性欲は肉体だけが支配するものではない」という言葉にぼくは共感を覚えた。
肉体的なものだけではなく、もっと精神的なものも性欲に含まれるのではないだろうか。
始まりは肉体、なりゆきは心と説いている詠美だが、このふたつが切り離されたところに性欲というのは、実は存在しないような気がする。
どちらも同じくらいの沸点に到達した時に、性欲が熟すと詠美は言っているのではないか。
セックスだけならタイプとであれば誰とでもできる。しかし、人間というのは、それだけでは飽きてしまう。その関係をより続けるには、精神的なつながりもまた必要になる。
そんなことをこの文章を読みながら思った。
【DATA】
山田詠美「それは腹わたの問題」講談社『私のことだま漂流記』
KEN'S NIGHT M5レフィル<方眼円盤集>
KEN'S NIGHT 2nd Track12 You'd Be So Nice to Come Home to