CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 101st    「堤防」    

 私は、自力で何かをするという才能に恵まれていない。それが私の劣等感を形作っている。そして、私は、その劣等感の存在を認めつつ今日まで来てしまった。後一歩というところで、私は、いつも、すべてを諦める。私には、能力以上に発揮出来ることが、何ひとつないのである。
「堤防」    講談社文庫『晩年の子供』より

短編集『晩年の子供』を読んでいると、山田詠美の少女時代はこんな感じだったのかなと思えるようなエピソードがいくつも出て来る。主人公がみんな詠美の子どもの頃をモデルにしているのではないかと思える場面が数多く出て来るからだ。
当時のことは半自叙伝的小説『私のことだま漂流記』に詳しく書かれているので、それを合わせて読んでみると、何かそのあたりのヒントが隠れているかもしれない。
詠美は良くエッセイなどで「作家は記憶力が大事」だと述べているが、詠美の一連のこういった子どもを主人公にした小説というのは、そんな彼女の記憶力によるところも大きいのではないだろうか。

【DATA】    
山田詠美「堤防」    
講談社文庫『晩年の子供』    
KEN'S NIGHT M5レフィル<赤色日本景>
KEN'S NIGHT 1st Track 11 Smile ※ラメ入り