CLUB AMY 365

山田詠美の文章をご紹介。詠美さんご本人の掲載許可済です。

Day 151st マーク

 ダンスはセックス以上に性的だ。何故なら、とびきりの手段であるあの部分を決して使わないから。だからこそ、体を一層、美しく効果的に使おうと努力する。あの部分を使ってしまえば、事は容易く進んでしまうのに、そうではないから、筋肉はとても苦労する。
山田詠美「マーク」
『フリーク・ショウ』より

山田詠美直木賞作家というよりも、芥川賞作家だとぼくは常々思っている。両者の違いを明確に定義するのは難しいのだが、ぼくは直木賞作家はストーリーで読ませる作家、芥川賞作家は文章で読ませる作家、だと勝手に思っている。
この上記の文章を読んだだけで、これは明らかに芥川賞作家の文章だとぼくは思うわけだ。ダンスのことをこんな風に表現するなんて!
しかも、この場合のダンスというのは、一人で踊るダンスではなく、男女、あるいは想いを寄せている者同士のダンスである。それをこのように書けるのは、詠美が肉体を使った様々な感覚を言語化する能力に長けているからなのではないだろうか。
だから、そういう文章に出会うたびに、ぼくは「はぁ、詠美の文章、やっぱり最高!」となるのだ。
【DATA】
山田詠美「マーク」幻冬舎文庫『フリーク・ショウ』
KEN'S NIGHT M5レフィル<彩色音楽集>
KEN'S NIGHT 2nd Track 3 The Girl from Ipanema ※ラメ入り